Seiji's blog

読書メモ

『ビジネス力の磨き方』大前研一・著(PHPビジネス新書)

 

ビジネス力の磨き方 (PHPビジネス新書)

ビジネス力の磨き方 (PHPビジネス新書)

 

 Kindle版 大チャンス到来! ビジネス力の磨き方 (PHPビジネス新書)

 

 大前さんがこれまで書かれてきた、論理思考や仮説思考、戦略思考などではない、従来あまり取り上げることの少なかった、ビジネススキルについて書かれた本。

 

【読書メモ】

1. 先見力

「先見力」とは「勘」や「ひらめき」とは違う。訓練すれば誰もが身につけられるビジネススキルの一つ。先見力というのは、現在起こっている事柄をこまめに調べて、そこから変化の兆しを見つけ、その兆しが今後どのようなトレンドになるかをしつこく考えた結果

 先見力とは、①観察、②兆しの発見、③FAW、④FFが正しくできる能力

 ありとあらゆる事象を観察することが先見力の第一歩。

 次の段階が、それらの事象の中から、ひとつの現象となって未来に影響を及ぼすであろう兆しを見極めること。これにはちょっとした技術がいる。「FAW:Forces at Work」に注目する。

 ある傾向を伴った事象があれば、そこには必ずその事象を発生させるだけの力(FAW)が働いてるはずだから、それを分析し発見する。

 それがわかったら次は、その力の方向に現在の事象を早送り(FF)してみる。そうすると、五年後、十年後、いまの事象が社会にどのような変化をもたらしているかが見えてくる。

 

2. 突破力

 既得権益層の壁をいかに突き崩すかはポイントが二つ。一つ目は、利害と無関係な層を見つけ、一大勢力として味方につける。二つ目は、既得権益層が抵抗しようにも、ぐうの音もでない強力な援軍を引き入れる。

 実際に絶対弱音を吐かないのが突破力の基本。いいのは、先達の偉業に触れ、そこから勇気のかけらをいただくこと。

 

3. 影響力

 はたして自分にはどれくらいの価値があるのだろう。それを知りたければ、自分という人間の影響力がいったいどこまで届いているかを考えてみるといい。

 この影響力というのは言葉を変えれば、カネを稼げる範囲のこと。

 ほとんどの人は相も変わらず、すでにある知識や情報をなんの検証もせず仕入れることばかりやっている。それではいくら努力しても価値など上がるはずがない。

 要するに、そこにある問題を発見し、その解決策を発見できる人間であれば、人種や国籍に関係なく、世界中どこに行っても影響力を発揮できる。

 影響力を強めるには型を持つ。著者がコロンビア大統領に経済再生のアドバイスをしたときは、コロンビアのことはほとんど知らなかった。でも、Googleを駆使すれば、必要な情報は、日本にいながらいくらでも手に入る。

 基礎情報さえ揃えば、あとは著者の専門の「ボーダーレス経済と地域国家論」に具体的な数字や事例を当てはめるだけでいい。そうすれば自ずから問題点と解決策が浮かび上がってくる。

 著者に限らず、影響力を持つ人間はみな、経験に裏打ちされた自分なりの型を持っている。その型が余人をもって代えがたいものであればあるほど、強い影響力を行使できるのではないだろうか。

 現実的なことを言うなら、まずは広い範囲で応用できる「思考法」のレベルから、自分の型を固めていくのがいい。著者もマッキンゼーで「ピラミッドストラクチャー」や「MECE」を、それこそ型となって自分のものになるまで徹底的に仕込まれた。

 思考の型ができていれば、それに当てはめることで、たとえ未知の分野の事象であろうと、容易に矛盾や足りない要素に気づくことができる。逆に、型もなく闇雲に考えているだけでは、なかなか本質にはたどり着けない。

 型を身につけるには、それが無意識のうちにできるようになるまで、ひたすら反復練習を積むこと。思考法の型なら、自分が当事者だったらどうするかという具体的なケーススタディを、それこそ無限回繰り返す、これが一番効果的。

 この、もし自分が◯◯だったらというケーススタディを続ければ、頭は大いに開発され、思考空間上でバリバリ働くようになる。MECEを鍛えるなら、友人を利用するといい。人は誰でも思考に癖や偏りがある。

 情報収集ばかりしているような人は、頭の中がノイズでいっぱいな分、考える力がスポイルされていると思った方がいいくらい。

 独自の型を持たないような人間では、誰かに影響を与えるなどということは、とてもじゃないができない。その型は、日々のたゆまないトレーニング耐えなければ身につけることはできない。とくに思考法というのは、すぐに衰えるから、毎日欠かさずメンテが必要。

 著者は、自分で問いを立てては自分の型に当てはめて、自分なりの答えをだしていく。

 聴衆を納得させ、同時に完成度の高い講演だったと思わせるには、話し始める前に、最後の一分で何を言うかを決めておく。

 

4. 仕事力

 スピードアップのポイントはダンドリにあり

 著者は暇さえあればスケジュール帳を開いて、これ以上詰められないか、これ以上効率的な組み合わせは考えられないかとダンドリを考えている。癖になってしまっているといってもいいくらい。

 「あれ、どこにあったけ」が時間を奪う

 これから先も頻繁に使うことが予想される人名や単語なら、いっそのこと腹を決めて暗記してしまうほうがいい。そうすれば探す時間は短縮どころか必要なくなる。

 覚えにくいがどうしても覚えておきたい言葉は、手帳の後ろにある忘備録に書き込んで、食事の前に眺めたりしながら暗記をしている。地味な努力だが、やるのとやらないのとでは、仕事のスピードも確実に変わってくる。

 コンテクスト・プロセッシングを使う。言い換えればこれは、ひとつの事象の裏にある意味を知り、それを覚える。

 たとえば、あるベンチャー企業がIT分野で成功→M&Aで事業拡大→社長に複数企業を経営する能力がなかった、有能な部下もいなかった。このとき、ベンチャー企業の名前や、事業内容、株価などは忘れてもかまわない。そうすると、M&Aで拡大路線をとろうとしている企業に相談されたとき、すぐに社長に事業を横断的に見る能力があるかどうかに注目すればいいことがわかる。 

 二十一世紀の情報収集術。新聞を四紙五紙並べて読んでも、サイバー世界に流通する情報には、質も量もかなわないから。

 新聞の見出しの大きさをそのまま受け入れていたら、その新聞社のデスクと同程度の知的レベルしか永遠に獲得できない。

 著者は十年前に新聞の購読をやめた。毎朝、RSSリーダーに集めた五百の記事に、十五分で目を通す。そのうちに自分にとって重要だと思われるものは保存する。そして、それらの情報を分析したり、いくつかの情報を組み合わせたりしながら、次の展開を予想する。

 もともとサイバージャングルに、そこにあるものが食べられるものどうか教えてくれる人など、いるはずがない。それを自分自身で判断できるようになるのが、「二十一世紀の生存の方程式」。だから、サイバージャングルで生きて美味なる果実を手に入れたければ、無駄とか非効率とかいってないで、最初にうちは全部口に入れてみること。

 

5. 人間力

 仕事も人生も下地がなければ楽しめない。若い頃から苦労して下地をつくっておけば、後になってからその分だけ、仕事が楽しめるようになる。若いうちはとくに意識して取り組むべき。仕事だけでなく、バイクのような趣味も、文学や音楽といった教養の下地も大切。

 仕事でも趣味でも、下地を作っている最中は、楽しむどころではない。でも地道に努力して手に入れたスキルは、必ずあとで人生に、大きな稔りを与えてくれる。

 オフの予定から先に入れる。ここは仕事を休んでこれをやると決めたら、その予定は何があっても動かさない。

 結局、今を楽しめない人は一生楽しめない。現時点で好きなことがやれてない人は、第二の人生でもやっぱりできない。

 著者は、金曜夜から土曜にかけては、自分の趣味に充てると決めている。残業を辞めたら、仕事の時間が足りないなら、朝を有効活用すればいい。著者は昔から、朝五時から仕事に取り掛かることにしている。九時に事務所に顔を出すときには、一仕事終えているのが普通だ。

 無駄な残業よりも家族との会話を優先する。家庭が喜びの場でなくて、どうして仕事や人生を楽しめるのか。

 二十一世紀は、自分で問いを立て、答えを見つけ、付加価値を生み出すことができるかどうかで、個々のビジネスマンの価値が決まってしまう時代。つまり、朝から知的生産に従事できないようでは、その人は業務に耐えられないとみなされてしまう。

 アメリカのビジネスエリートは完璧な「朝型」。ブレックファーストミーティングをする。

 著者は、時差ボケを正常化するために、何時であろうと目覚めた時間に起きてしまう。人生、頭の冴えている時間はそう多くないのだから、せっかく覚醒したのに、まだ早いからとベッドで悶々としているのはもったいない。

 ハーバード大学はなどでは、いまだに八ヶ月ぐらいかけてケーススタディをつくっているようだが、現代ではまるで役に立たないと言ってもいい。ケーススタディやるなら素材はあくまで旬のものを使って、リアルタイムでやらなければ意味がない。

 朝は集中力全開で仕事に臨む。ただ、なんでもかんでも朝がいいというわけではない。たとえば、クリエイティビティが求められる作業の中には、明らかに夜のほうが向いているものも多い。

 むしろ、サラリーマンなら、早起きして何かをするより、始業時間にすぐさま仕事に集中するためのウォーミングアップの時間として、朝の使い方を考えたほうがいいだろう。

 

6. なぜ今ビジネス力か

 二十一世紀には、突出した企業や個人をつくる以外に、経済を成長させる方法は存在しない。世界競争に勝つための指標は「ジャック・ウェルチを何人つくれるか」である。たとえば、北欧のフィンランドは、ノキアの元CEOヨルマ・オリラという、たった1人の天才経営者の力だけで復活した。

 日本の優先課題は、中国やベトナムに行っても見つからないほどすぐれた能力をもったプロフェッショナルを育てること。それも大量にではなく、たった1人でもよい。

 一般的な経営力が身につけば、業界の知識など半年もあれば覚えられる。

 

【目次】

第一章 先見力を磨け

第二章 突破力を磨け

第三章 影響力を磨け

第四章 仕事力を磨け

第五章 人間力を磨け

終章 なぜいまビジネス力なのか

 

 

  

Kindle Voyage Wi-Fi

Kindle Voyage Wi-Fi