Seiji's blog

読書メモ

『質問力』齋藤孝・著(筑摩書房)

 

質問力 ちくま文庫(さ-28-1)

質問力 ちくま文庫(さ-28-1)

 

 Kindle版 質問力――話し上手はここがちがう (ちくま文庫)

 

【読書メモ】

1. 「社会で生き抜く力の差」
 初めて会う人と3分後には深い話ができたり、相手の専門的な知識や話題を、たとえ自分が素人でもきちんと聞き出せる能力があるかないかは、その人の人生の豊かさを決定づける鍵になる。出会いが人生の豊かさの質を決めるのである。
 初めて出会う人と、どれだけ短い時間で濃密な対話ができるか。実はここに社会で生き抜く力の差が生まれてくる。
 
2. 「質問力は恐ろしい指標」
 「質問力」は状況や文脈を常に把握する力が試されているといえる。質問を聞けば、その人間が場の状況やそれまでの文脈をどれだけ理解していたかが即座にわかってしまう。非常に恐ろしい指標である。
 
3. 「経験世界」
 上手な対話者の場合は、自分の経験世界を会話の中に織り込みながら話をする。すると表面の話だけでなく、ここ何年か自分がどんな経験をしたかを話すことになる。さらに相手の経験世界からも上手に話を引き出す。これが「質問力」である。おもしろい話をするからと言って、対話上手とは限らない。
 
 楽しい場を作っていくためにはお互いに経験世界を混ぜ合わせることが大切だろう。双方の脳味噌を混ぜ合わせられる快感が、充実した時間を過ごしたという快感につながるのである。
 
 相手の苦労や積み重ねてきたものを掘り起こすような質問ができると、少なくとも相手にとっては深まった話ができた印象になる。
 
 大切なのは、相手がいちばん苦労したことをとりあえずくみ取ることである。その人間がいちばん力を入れている部分をしっかり認めることがコミュニケーションには必要である。
 
 コミュニケーションのコツはその人の奥底にある経験を引きずり出してくるところにある。
 
 誰でも、好きなことについて語るのは気分がいいので、上機嫌になる。(P110)
 
 相手と自分がいったいどこでつながっているのかを強く意識しながら対話をすることが、いい質問を生み、コミュニケーション全体をいきいきとたものにするのだ。
 
 自分の話はいつでもできる。大切なことは相手の好きなものと自分の好きなものにたとえズレがあっても、何とかつながりを見出しながら話を折り合わせていくことだ。
 
 しかし、何でも相手の経験世界に踏み込めばいいというものではない。・・中略・・必ずずしも過去の経験に沿っていなくても、今現在の文脈で、出てきた料理、飲んでいるワインについて質問するのは間違いではない。状況を「うまく流していくゾーン」といってもよい。
 
4. 「興味や関心のすりあわせ」
 質問とは相手の状況、相手の興味、関心を推しはかり、自分の興味や関心とすりあわせてするものである。自分の一方的な興味だけで聞く質問は、相手にとって苦痛以外のなにものでもない。
 
5. 「沿いつつずらす」
 コミュニケーションの秘訣は「沿いつつずらす」ことにつきる。
■ 沿う(共感系、まとめ系、整理系がある)
・うなずく(身体レベル)
・あいづち(話しやすくなる)
・オウム返し(場を流して次の言葉を引き出すのに効果的)
・言い換え(内容がきちんと消化されていることが相手に伝わる)
・比喩的に言い換える
・引っぱってくる(相手の口から発せられた言葉を自分も使うと、相手は大変好感を覚える。外部から引っぱってきて、第三の文脈を立てるという技もある)
・相手を自分に沿わせてしまう(荒技)
 
■ずらす
 基本技は、抽象的な話になりずぎたら、「具体的に言うとどうなるか」と質問する。具体的な話が長くなりすぎたら本質的なテーマに持っていく。この往復運動がずらしのコツである。
 
6. 「聞いてみただけ」
 「どちらまで?」「ちょっとそこまで」は意味のないやりとりだ。だがこれが潤滑油として必要だと司馬(遼太郎)は言う。
 
7. 「相手について勉強」
 相手のことについて勉強しておくのが質問者の基本だ。その人にしか聞けないことを聞くのが礼儀だろう(インタビューで)。
 
 「質問力」のなさを決定付けるのは勉強不足である。相手に関する情報がなければいい質問はできない。
 
 「質問力」を高める基本は、相手に対して事前に勉強をすませておいて、相手の専門性に自分を加速させて寄り沿った上で質問するということである。
 
8. 「私個人の話」
 コミュニケーションのひとつのコツだと思うが、「私個人の暦の話になりますが」と前置きができることは大切だ。つまりコントロール可能ということを相手に示しているのだ。自分の話を始めたら止まらなくなる”病気”は持っていないことがわかる。
 
9. 「クリエイティブな質問」
 「ハイレベルな質問力」を大づかみなイメージで定義すると、限られた時間の中で相手にとって本質的な事柄を聞き出すことができる能力のことをいう。とりわけ、答えている当人がその質問をされるまで思いもしなかったことが導きだされるものを、最もすぐれたクリエイティブな質問という。これが「質問力」の最終目標である。
 
 1つでもインスピレーションを得ることができれば、コミュニケーションは完全な成功である。
 
10. 「質問例」
・「それは別のこれと似ていますか?」(質問の王道。別の何かを持ってくることで、相手も触発され食いついてくる)
・変化をたずねる質問(本質を突く質問。その答えは豊かになることが多い)
・具体的に言うとどういうことなんですか?(あらゆる場面で使える)
・物事の結果について聞くより、何かが生まれてきた経緯について聞く(そのほうが得るところが多い)
 
11. 「ハイレベルの質問力」
 ハイレベルの「質問力」で大切なのは自分自身にその質問をした時、どう答えるのか、一応シュミレーションして、ある程度の答えを用意しておくということである。自分が聞かれたら、とうてい答えられないような質問はしない。そうでないと、返ってきた相手の答に対応できないわけだ。
 
質問力――話し上手はここがちがう (ちくま文庫)

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