『グロービスMBA集中講義[実況]ロジカルシンキング教室』グロービス・著、嶋田穀(グロービス経営大学院教授)・執筆
【本の概要】
人気ビジネススクールの履修率No.1講座を書籍化。ビジネスパーソンに不可欠となったロジカルシンキングの教科書。
【読書メモ】
1. ロジカルシンキングは不可欠
ロジカルシンキングができないと、語学だけができたところで、結局、文化や社会的背景の異なる相手を説得できない。
②競争環境の変化のスピードアップとその激化
「スピーディに、より重要な論点(イシュー)に関して正しい意思決定をし、なおかつそれを適切に周りの人々に伝える」ということがこれからどんどん求められる。
③クリエイティブに考える必要性が増したこと
ロジカルシンキングによって、時間を確保できる。また、自分の考え方を客観的に見ることにつながる。
2. ロジカルシンキングの4つの基本ルール
MECEやロジックツリー、ピラミッドストラクチャー、問題解決、これらすべての根底にはこの4つの基本がある。
①「そう/そうじゃない」を明確にする
結論をはっきりさせるということ(イエス/ノー、やる/やらない、など)。ロジカルシンキングの目的は結論を効率的に出すこと。なお、何でも二元論で考えてよいという意味ではない。重要なのは、明確に「こう考える」ということであり、その結果は、白でもなく黒でもなく、「緑である」「赤である」かもしれない。明確な主張を持つことが大事。
②「なぜなら」「だから」で話を展開する
◯根拠ーだから→結論
◯結論ーなぜなら→根拠
ロジカルシンキングとは、区別や判断といった小さなブロックを積み重ねていく作業に似ている。この2つが一つのブロックにあたる。このブロックを論理的に積み重ねていく作業が、ロジカルシンキングの重要な基本動作。
根拠と結論をつなげる手法には、「演繹法」と「帰納法」の2種類がある。
ビジネスにおけるロジカルシンキングには、100%の厳密さはいらない。どれだけ確からしい根拠を出したところで、その根拠はあくまで過去の事実にすぎない。この不確実性の高い時代、必ずしも過去の延長に未来があるわけではありません。75%の人が賛成できるような主張ができればそれには大きな意味がある。
「根拠と結論をつなげること」と「厳密さを出す」の二段階に分けて考える。
ロジカルに考えて、答えは自ずと一つに定まるわけではない。見ているファクトは人それぞれ、帰納的な理由づけでは、解釈、結論に、個々人の経験や価値観が反映される。
③ファクトに結びつける
結論の土台はファクトでなければならない。
ロジカルシンキングでいうところの「ファクト」は、事実やみんなが受け入れる自明の理、原理原則のこと。一番わかりやすいのは、数字で具体的に事実を示しているデータ。事実を見て確認したことも、ファクトとして有効。ただ、それが実態を表しているとは限らないケースもあるので注意が必要。
◯最終結論ーなぜなら→根拠1ーなぜなら→根拠2・・・・→根拠Z(ファクト)
◯根拠(ファクト)ーだから→結論1ーだから→結論2・・・・意思決定(最終結論)
客観的なデータとは対極にありながら、ロジカルシンキングの根拠として有用なのが業界に詳しいキーパーソンのコメント、特に確信に近いコメント。将来のことは現時点では数字やデータとして表れておらず、むしろ識者や専門家といったキーパーソンの頭の中にしかないことが少なくない。
結局、ファクトかどうかを見極める際の最終的な基準は、「これは人を納得させるロジックの根拠たりうるか?」ということ。
④論点を押さえ、全体をバランスよく考える
ビジネス上、あまり意味のないことを考えても仕方ありません。自分の職位や役割を踏まえたうえで、「今、自分は何を考えるべきなのか」をしっかり押さえることが重要。
限られた根拠だけで出された結論は、一見説得力があるように見えても、少し反論にあうとすぐに崩れてしまう。一方で、土台(根拠)の数が多すぎると、逆に伝えるのが難しいという問題が生じます。そこで、最終的な結論を支える土台は3つか4つに集約すると、説得力があり、かつわかりやすくなる。
イメージとしては、意思決定の妥当性や主張の説得力にとって八割効いてくるような要素には八割の時間を費やして深堀りし、一割のインパクトしかない要素には一割程度の時間で十分と考えておけばわかりやすい。
バランスの良さを確実なものにするためには、経営学全般の知識も必要になりますし、ビジネス以外の知識や教養が必要となることも多い。そうした知識をインプットしながら、「何を考えるべきか」「今考えていることは全体の中で重要か」を常に自問する。
3. ロジカルな思考を加速するための考え方の五つの「型」
最も重要な要素が、「ものごとを考えるときに全体を構造的に把握する」こと。一から順に追って考えていくよりもはるかに早く正確に結論にたどり着くことができる。
構造的に把握するということは、要素を一個一個バラバラに見るのではなく、それぞれの関係性や流れといった全体像を理解すること。イメージとしては、ただ要素を箇条書きにして並べるのではなく、頭の中で図にして考えるような感じ。
「型」といっても、フレームワークとは違う。フレームワークは具体的な目的や使いどころがはっきりしたものだが、ここでいう「型」は、もっと無色透明で柔軟性が高く、フレームワークの全段階のもの。
「型」そのものが論理的というわけではなく、それを知っておくと論理的に考えるスピードや精度が格段に上がる、ターボエンジンのようなもの。
①MECE/ロジックツリー
MECEで考えることは以外と難しい。
MECEにこだわりすぎない。ダブリのほうは多少あっても仕方がないと割り切り、その代わりにできるだけ決定的なモレのほうをなくすこと。
なんのために全体を分類するのかという目的をきちんと踏まえて、意味のあるMECEを心がける。
MECEを意識しながら、一つのことをどんどん分解していくのに便利なツールが「ロジックツリー」。
同じものを分解する場合でも、でき上がるロジックツリーはまったく違った形になる。センスの見せどころ。
ロジックツリーが最もパワフルに使われるのが「問題解決」。何が問題なのかを正しく理解したうえで、どこに問題があるのか、言い換えればどこが改善感度の高い箇所なのか(Where)、なぜその問題が発生したのか(Why)、どのような解決策があるのか(How)の順で、ロジックツリーを活用していく。
情報の整理や分析によく使われる型で、ものごとを構造的に把握するうえでも代表的なツール。二つの軸を組み合わせるだけで、複雑に入り組んだ情報が非常にわかりやすく整理でき、また一つの切り口だけではわからなかったことが立体的に見えてくる。
自由度が高いだけに二軸の取り方が非常に重要となる。ある程度の経営知識がある前提で、五割くらいはセンスがものをいう。センスを磨くには有名なマトリックスを実際に使ってみること。
テーブル型とポジションマップ型の2つのタイプがある。
【テーブル型】
「メリット/デメリット」「重要度が高い/重要度が低い」など、定性的な側面から情報を整理するときに多様される。例:SWOT分析。
情報がどちらの枠に分類されるか明確にすることが大事。
【ポジションマップ型】
一方こちらは、「“どのくらい”重要か」「“どのくらい”緊急か」のように、程度や、同じ象限の中でも相対的な位置が重視されるツール。数値化できれば、軸にスケールを入れる。
③フロー図
作業工程や因果関係などの時間的な流れのある関係を、わかりやすく可視化するために使われる。トラブルが発生した場合や工程を改善する場合でも、フロー図の形で考えると、「一連の流れのどこに問題があったのか」「何がボトルネックなのか」といった点を明確化しやすくなる。
オペレーションやマニュアルも、フロー図と相性がよいものといえる。(これらはロジカルシンキングの応用編といったところ)
④関係図
含まれる要素や人の関係・つながり、あるいは出来事の因果関係などが視覚的に見えるようにした図。例:ソシオグラム、五つの力。
ロジックツリー、マトリックス、フロー図はより透明で純粋な概念であるのに対し、「関係図」はもう少し現状に即した意味や目的を含んでいるといえる。少しアドバンスの型であり、よりビジネスの現場経験や経営知識を持っていないと使いこなすのは難しいといえる。
「関係図」を考えるうえでのポイントは、それぞれの要素がMECEであること。
⑤仮説検証
①〜④は一種の「枠」であり、図解で表現できるようなもの。何かを主張するときの土台(柱)、基本的分析ツール、ものごとを構造的にとらえるための武器。
一方、仮説検証には目で見える枠はない。ロジカルシンキングをより効率化させるための「考えるプロセス」。
ロジカルシンキングの基本に「ファクトに結びつける」というルールがあるが、通常、ある論点・課題が与えられたときは、まず論理のベースとなるファクト、つまり情報を集めることから入る。しかし、何の方針もなくただ漠然と集めていては、時間ばかりかかっていつまで経ってもその先に作業を進めることはできない。
そこで役立つのが、これまで紹介してきた四つの型であり、仮説検証というプロセス。
【一般的な思考法】
論点・課題 → リサーチ・情報収集 → 情報の分析・考察 → 結論?
何の方針もなく漠然とリサーチや情報収集を行なっているので時間がかかりすぎる。
【仮説検証】
論点・課題 → 仮説を立てる → 仮説と適切な枠組みに沿った情報収集 → 仮説の検証・修正 → よりよい結論
仮説を元に情報を絞り込んでいるので、早くより良い結論にたどり着く。
立てた仮説を元に、「どのような情報を集めればそれが検証できたといえるのか」を考え、「枠」を作って情報を収集し、検証、修正を行なっていきます。この「枠」として有効なのが、①〜④の「型」。
仮説検証では、最初にどれだけ精度の高い仮説を立てられるかが一つのポイント。それだけ早く正しい結論にたどり着く可能性も高まる。
仮説を立てるためには、常日頃から好奇心や問題意識を持って情報を集め、さらに、「そこから何が言えそうか」と自問する習慣をつけること。
検証とは、仮説とファクトの間を行ったり来たりする作業。「なぜなら」「だから」でつながらなければ、どこかに誤りがあるということ。
五つの「型」を使えば、さまざまな要因が絡まり合う複雑なビジネス環境を、必要に応じた視点から整理することができる。最終的には各自がより効果的なフレームワークを自分でつくれるようになるための参考として、広く世に認められた代表的なフレームを見る。有名なフレームワークはビジネスパーソンにとっての共通言語。
フレームワークには、それぞれに目的や特性があり、そこを考えて最も適切なフレームワークを選ばなくてはならない。例:業界の魅力度を知る→五つの力、マーケティング施策→4P。
フレームワークを必要もない場面でむやみに使うのは、ゴルフでバンカーでもグリーンでもドライバーで打とうとするようなもの。
フレームワークで分析する際には、字面だけで考えるのではなく頭の中に具体的なイメージを浮かべるとよい。
ロジカルシンキングの目的は、説得力のある結論をスピーディに出すこと。フレームワークも同じで、「このフレームワークを作った結果、こういう分析結果、あるいはメッセージが導き出されます」という状況を生み出すことが目的。フレームを作る段階で、「なんのためにこのフレームワークを作っているのか」「ここから何を伝えたいのか」ということを、頭の片隅で常に意識するようにする。
うまい人と下手な人の最も大きな違いは現場に根ざしたビジネス感覚を持っているかどうか。日頃から問題意識と現場感覚を持ってファクト収集のレベルを上げることがフレームワークを上手に活用するうえで重要。
・3C:Cutstomer、Competitor、Company
ビジネスを異なった視点から見ることで、そのビジネスにおける課題や成功要因を見つけ出し、これからの戦略を考えるために使われる。項目のバランスが良く、MECEとして絶妙。また、マジックナンバー3である。
・4P
マーケティング戦略を考える際に役立つ。
・採用のフレームワーク
スキル(ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキル、テクニカルスキル)、マインド、組織へのフィット感
・心技体
・アンゾフの事業拡大マトリクス
③フロー図のフレームワーク
ビジネスの流れを、機能ごとに分類し、一つの流れとして整理、図解したもの。バリューチェーンと呼ばれるのは、どの工程で付加価値(バリュー)を生み出しているのか分析するためのツールだから。また、バリューを生むにはコストも必要なので、「現在どの段階にコストをかけており、それに見合うバリューが生み出されているのか」を分析することにもなる。
作る際のポイント:企業の実態にあったバリューチェーンを見極める、枠を増やし過ぎない、ボトルネックを発見する、バリューチェーンの再構築(例:ユニクロのSPA)
プロジェクト管理や工程管理に用いられる表で、横軸に時間、縦軸に人員や作業内容を置き、作業計画やスケジュールをグラフ状に表したもの。
④関係図のフレームワーク
・五つの力
業界の魅力度を理解する。
フレームワークはあくまでロジカルシンキングを加速する「ツール」であって、魔法のように正しい主張を導き出したり、唯一絶対の問題解決策を機会的にもたらしてくれたりするものではないということ。フレームワークで情報を整理したり、分析したうえで、自分の知識や経験を総動員して、そこから何が言えるのかをしっかり考えぬくことがより重要。
【目次】
第1章 筋道を立てて論理的に考える
第2章 思考のスピードを加速させる考え方
第3章 フレームワークで時間も労力も節約する
第4章 説得力のある主張を作る
第5章 問題の本質をとらえ、解決策を導く